【Review】The Legal Matters “Conrad”

conrad無表情で飄々としたコアラ(ミスター・コンラッド)、このなんともほのぼのとしたジャケットの中身は、とんでもない完成度を誇るパワー・ポップ、ポップ・ロックの玉手箱。まさに完璧。このレビュー内にあと何回「完璧」という言葉が出てくるかわからない、それくらい完璧なのである。後世に語り継がれるであろう名盤の誕生だ。

オープニングは“Anything”、イントロから1コーラス聴いただけでゾクッと来てしまった貴方、正解。その震え、高ぶりに応えるポップ・ソングが、このあとも続いていくよ。
ミドル・テンポの“I’m Sorry Love”、ふと訪れるリズム・チェンジ、Cメロからの展開の妙が堪能できる、ジェリー・フィッシュ的なポップ・ソング。楽曲もさることながら、エレキ・ギターが良い。トーンといいフレージングといい見事としかいいようがない。クランチ・パートと揺れ 系パート、どちらのエフェクトのかけ具合も絶妙だ。
印象的なリフの“Minor Key”、サビ前にこのメイン・リフを1回挟むところ(1番だけというのもミソ)とか、2番の入りとか、本当に構成がうまい。ベース・ラインもいいね。シンプルに刻むリズム・ギターとオーソドックスなオブリガードの“Short Term Memory”、ミドル・テンポのこのナンバーはマシュー・スウィート(特に『Girl Friend』期)好きにも受け入れられるだろう。
“More Birds Less Bees”、これもファーストの頃のジェリー・フィッシュを彷彿とさせる。リヴァーヴィーなギターがミステリアスな雰囲気を醸し出してるね。味のあるコード進行、これは勉強になる。
唯一のキース作“Pull My String”は、カントリー・タッチの素朴なフォーク・ロック。清涼感のあるナンバーで、マシューが参加していたザ・ソーンズあたりを想像していただけると伝わるかな。
“She Called Me To Say”は、3人の根幹に流れてるビートルズとりわけジョン色が濃い。ちょっとヒネくれた構成とかラスト40秒からの終わらせ方とか、もう教科書。バンドでも真似したくなる。
“The Cool Kid”は、アコースティック主体のシンプルなナンバーだが、随所に魔法が隠されているので侮れない。
続く“Hip Hooray”、演奏といい構成といい、まさにビューティフル・ソング。サビ前のアルペジオ、これに尽きる。
“Lull And Bye”は、ビーチ・ボーイズ的なハーモニーが堪能できる1分強の小曲。もっと聴きたい!と思わせる絶妙なところで終わってしまうのだが、この1分の安息があるのとないのとではアルバムの印象が変わってしまう。それくらい重要で存在感のある1分だ。これがあるからこそ、ポール色を感じるビートリッシュなラスト曲“Better Days”が、より一層輝きを増している。

トータル・タイム約37分に集約された、めくるめくポップ・ワールド。彼らの肝であるメロディーとコーラス、ハーモニーに解説ではあえて触れなかったのは、全曲素晴らしいから。これはもう聴いて味わってほしい。やり過ぎな所がひとつもない、絶妙なさじ加減のアレンジ、サウンド・メイキングも言うことなし。曲順も完璧で、気がつくと引き込まれている自分がいる。アルバムを通して聴けるという魅力も、音楽ファンとして嬉しい作品。
2014年に発売されたファースト『The Legal Matters』は、たしかに良かった。ティーンエイジ・ファンクラブなどにも通ずる雰囲気を持った良盤だ。だが、今あらためてファーストを聴きなおしてみると、まだ手探りな部分を感じる節がある。あれから2年、このバンドがこれだけの進化を見せた理由、それは、より強固になった3人の信頼関係による所が大きいのではないだろうか?各々への信頼から来る自信、それが音となって如実に表れている。おそらく、「これは素晴らしい作品になる」という確信めいた予感があって、期待に胸を躍らせながらレコーディング作業を進めていったのだろう。抑えきれないワクワクした気持ちが、アルバムを活き活きとさせているんだよね。継続した活動が期待できることも嬉しいかぎり。
ビートルズにジェリー・フィッシュにクラウデッド・ハウスにティーンエイジ・ファンクラブに胸がときめくなら、このアルバムは間違いなしだ。5年後10年後、パワー・ポップの名盤の1つとして必ず紹介され続けるであろうアルバム、出会えて良かった。

ご参考までに、各楽曲のメインボーカルを(基本的に作者がメインで歌っています)
Chris Richards:
”Anything”、”Minor Key”、”More Birds Less Bees”、”Hip Hooray”、”Lull And Bye”
Andy Reed:
“I’m Sorry Love”、”Short Term Memory”、”She Called Me To Say”、”The Cool Kid”、”Better Days”
Keith Klingensmith:
“Pull My String”

Track Listing;
1. Anything
2. I’m Sorry Love
3. Minor Key
4. Short Term Memory
5. More Birds Less Bees
6. Pull My String
7. She Called Me To Say
8. The Cool Kid
9. Hip Hooray
10. Lull And Bye
11. Better Days

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