Pop 4 – “Summer”

Pop4もし、あなたが良い音楽に飢えているのであれば、このパワーポップ界の三ツ星シェフ4人が本気で取り組んだ創作料理の数々を、ぜひご賞味ください。素材も調味料も知り尽くしたシェフたちの作る料理=楽曲は、どれもがメイン・ディッシュ。きっとあなたの舌?いやいや耳を満足させることでしょう。

メンバーは、Prefab Sproutのオマージュ・プロジェクトであるSproutlessにも参加していたLiar’s ClubのScott McPherson(以下SM:Roger Joseph Manning Jr.のアルバムにも関係)とAndrea Perry(AP)、The Corner LaughersのKC Bowman(KCB)、VanillaのKirk Adams(KA)からなる4人組で、皆作詞作曲をし複数の楽器を演奏するというポップ職人の集まり。それぞれXTC、The Beatles、Stackridge、Pugwash、Jon Brion、Elliott Smith、70年代のTop40などからの影響を公言しています。

SM=“The Protagonist(主人公)”、KCB=“The Logician(論理学者)”、KA=“The Champion(王者)”、AP=“The Mediator(仲裁者)”

アートワークに記されている4人の役どころ?からは、なんとなくですがこのプロジェクトの経緯や役割、性格が見えてきますね。4人のハーモニーが美しい#1で厳かにアルバムの幕は開き、続く#2はAPとKCBによる慈愛に満ちたスピルチュアルな楽曲。木も月も太陽も、そして自分自身の存在も「すべては美しい」という啓示。メロトロンの音色が、この曲の雰囲気を更に際立たせています。#3はKA作。基本はkey=Eの3コードなのにメロディーの妙と構成、展開でポップに仕上げてしまうという、まさにパワーポップのお手本のような曲。こんな曲作り、憧れますその1。”It doesn’t take an Einstein to realize the sunshine is better than rain(晴れが雨より良いと理解するのに、アインシュタインは必要ない)” というフレーズが印象的な#4はSM作。Jeff Lynneが泣いて喜びそうなナンバーです。PVも秀逸。ぜひご視聴を。#6はアルバム中唯一の3人での共作 (AP、KA、SM)。アコースティック主体の中にGeorge Harrisonを彷彿とさせるエレキ・ギターのアクセントが実に心地よい。コーラスとハーモニーも完璧で、非の打ち所がないです。私的フェイバリット曲。Danny Levinのストリングスが入る#7はチェンバー・ポップ。韻を踏んだ歌詞もかわいらしくてヒネくれてて遊び心が感じられますが、最後の一文 “But who knows where I’ll be. In a couple of centuries…(no one knows) Celebrated or jaded?” は何とも意味深ですね。まるでミュージカルのサントラに入っていそうな#8は、ヴォードヴィルな雰囲気も漂う佳曲。嫉妬している場面が目に浮かんできそう。Jellyfishが好きなら絶対OKな#9はピアノが印象的なナンバー。詩的な歌詞(タイトルからして 「Miserably Pursuing Happiness」ですからね)も深い意味が込められていそうな気がします。タイトルといえば、続く#10も気になります。「Jullianne Irish 結婚して結婚して!」な訳ですが、聴けば聴くほど女性ではない気が…もしかして、アイリッシュウイスキー?ヴォードヴィル的な作風は、Paul McCartneyやAndy Partridgeへの敬意が感じられます。Paul McCartney風味の#11、1:28あたりからの展開は私的ツボです!な#13は、どちらもKA作。こういったシンプルなコードにフックの効いたメロディーというの憧れますその2。#14のベース(AP:アルバム中11曲でベースを弾いている)、特に良いです!中期以降のPaulを彷彿とさせます。#15は#12と同じくSM作(どちらも3拍子のリズムが印象的)。「Tour for the Brokenhearted」というタイトル、 “If hell is a place then it’s here”、” Lost not forgotten   In hell they rot in …now on with the tour…” と並ぶ歌詞からは、「Hotel California」のような無常が感じられます。そして、ラストの#16。このアルバムは、幕開けも終幕もAPの作品です。「私は愛になります(#1)」「すべては美しい(#2)」と始まり、「あなたが持っていたすべては塵(#16)」と終わる…何か繋がりを感じます。アルバムを通して聴き終えた時、(特に歌詞の面で)あらためて気づくことも多々あることでしょう。

聞けばこのアルバム、メンバー4人が直接会わずにインターネットを駆使しながら、それぞれのホームスタジオで録音されたというから驚きです。こうした方法ができるというのはテクノロジーの進歩もさることながら、各メンバーがお互いのセンスやスキルなどに絶大な信頼があるからなのでしょう。この才気あふれるプロジェクトが今後継続していくのか、ライブやツアーの予定はあるのか…興味は尽きません。

Track list

1. I Will Become Love
2. Beautiful
3. Blow Wind Blow
4. Einstein and Sunshine
5. What’s It Gonna Be Like Now
6. Don’t You Be Like That
7. Jaded
8. I’m So Jealous
9. Miserably Pursuing Happiness
10. Julianne Irish
11. Straight To My Head
12. You’re No Aimee Mann
13. Lover’s Limbo
14. You Love Me
15. Tour For The Brokenhearted
16. Dust

Release Date : 2015/08/12
Label : SATELLITES GROUP